「夢の国」ディズニーランドを運営するウォルト・ディズニー・カンパニーから、興味深いアナウンスがありました。いわく、「ディズニー社は今後スポーツベット業界に参入する計画を立てている」というものです。
ギャンブルのイメージがディズニー社が与えるサービスにどのような影響を与えるのかが気になるところですが、このニュースについて解説していきます。
ディズニー社がスポーツベット業界参入を計画
ウォルト・ディズニー・カンパニーの2021年での第4四半期決算報告において、ボブ・チャペック最高経営責任者がスポーツベット業界への参入の計画があることを述べました。
具体的には、スポーツベット業界の企業と提携するだけのポテンシャルがディズニー社にはあるという内容の報告です。
ディズニー社の2021年の業績が振るわなかった中、スポーツ事業は好調で、ウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下にある、ストリーミングサービス「ESPN+(スポーツ専門チャンネル)」の契約者数は2021年度に66%増加しています。
また、ディズニー傘下のテレビ局で、2020年に視聴者数が多かった番組の90%は、スポーツイベントだったというデータもあります。その流れを受けて、2023年から10年間の全米プロフットボールリーグ(NFL)の放映権も獲得しています。
ディズニーのESPNがスポーツベット事業参入の基盤に
一方で、 スポーツ専門チャンネルESPNの第4四半期における広告収入は前年同期比で横ばいでした。
そこで若い世代を取り込むためにギャンブルであるスポーツベットがあらたな収入源になると結論づけた形となります。
すでに、その計画は進行しており、ESPNは2020年にギャンブル業界大手のシーザーズ・エンターテイメントやドラフトキングスと契約を結んでいます。そしてESPNのウェブサイトと両社のスポーツベットサービスをリンクさせています。
ディズニー社のジレンマ
ただし、ディズニー社は家族向けサービスを主体としているため、ギャンブル業界に参入することでクリーンなイメージをいかに保持するかが課題になると考えられます。そのため現段階ではライセンス提携にその活動を限定せざるを得ず、ライバル社に遅れをとっています。
たとえば、ライバル社のひとつFOXコーポレーションでは、グループ傘下のFOXスポーツが、スポーツベットのプラットフォームである「FOX BET」サービスを提供しています。
ディズニー社の当面の収入源は、ドラフトキング社の広告費と推測されます。ドラフトキング社は収益の80%ほどを広告に費やしており、2019年以来その収益は増加傾向にあります。ディズニー社はドラフトキング社とのライセンス契約で30億ドルを投じています。
ディズニー社が直接的にスポーツベットのプラットフォームを持つ可能性は今のところありませんが、それでも従来のディズニーのイメージを崩すことなくスポーツベット業界でのビジネスモデルを確立できるかどうかは不透明です。さらにスポーツベット業界にはすでに多くの企業が参入しており、ディズニー社は後発組となります。
スポーツベットのプラットフォームを持つことなくディズニー社がどれほどスポーツベット市場から収益を確保できるかどうかに今後注目されることになるでしょう。