アメリカではスポーツを楽しむひとつのスタイルとして、『ファンタジー・スポーツ(Fantasy Sports)』が人気を集めています。
1960年代に米国で始まったゲームですが、今では100万ドルもの賞金が出ることでも話題になっているファンタジースポーツとはどのようなものなのでしょうか。
ファンタジースポーツは「仮想チーム」で競うゲーム
それでは、ファンタジースポーツとはどのようなゲームなのか、その概要を説明します。
始まったのは1960年代
日本ではあまり馴染みのない『ファンタジースポーツ』ですが、1960年代にアメリカで誕生したゲームです。
参加者は、実在するスポーツ選手から好きな選手を選んで自分だけの「仮想チーム」を作り、実際にその選手が活躍した戦績などのデータを元にして、参加者同士の仮想チームの順位を競うというものになります。
第二次世界大戦後に、1950年代のNFL(アメリカン・フットボール)をベースに作られ、1960年代にベースボールをベースにファンタジースポーツが完成したと言われます。
チームの枠を超えて自分が好きな選手を集め、さながらベースボールチームのオーナー気分を味わうかのような楽しみが魅力で、米国やカナダでは大人気となり、2017年のユーザー数はアメリカとカナダでおよそ5930万人、2019年でアメリカのみで4590万人と推定され、毎年右肩刈上がりで増加しています。
NFLやベースボールのほかに、サッカーやバスケットボール、ホッケーやクリケットなども対象のスポーツとなっています。
ファンタジースポーツの仕組み
ファンタジースポーツは実際のスポーツ選手がシーズンを通して活躍し、その成績をポイントにしてチーム成績を競います。
たとえばベースボールの場合、ホームランを打てば1ポイント、三振を奪ったら1ポイントという形で加算されます。不調な選手は登録から外し、ほかのプレイヤーとのトレードもできるのは本物のGM(ゼネラルマネージャー)さながらです。
高額賞金が出る大会も開催
このファンタジースポーツは単にプレイヤー同士が競うだけではなく、賞金が出る大会も開催されています。
たとえばファンタジースポーツのプラットフォームを提供する「ドラフトキングス(DraftKings)」では、参加費を支払いコンテストに参加すれば、成績上位者には賞金が支払われます。なかには優勝賞金が100万ドルにもなるコンテストも開催されています。
そしてファンタシースポーツの人気は高まり続け、市場規模は2025年には863億ドルに達する見通しとなっています。
1試合ごとに楽しめる「DFS」も人気に
ベースボールの場合、1シーズンが終わったところでプレイヤー同士が持ち寄る仮想チームの成績順位が確定します。
それに対して、1試合ごとにプレイヤー同士の勝敗が決まる「デイリー・ファンタジー・スポーツ(DFS)」も人気を集めています。
DFSは5ドルから25ドルほどの参加費を支払い、1試合ごとにプレイヤー同士の勝敗を決めて勝者には賞金が出る仕組みで、たとえば5ドルの参加費であれば優勝賞金は1万5000ドル、25ドルであれば優勝賞金が100万ドルといった具合に賞金も高くなっていきます。
ファンタジースポーツには多くの企業が集まる
ファンタジースポーツのプラットフォームを提供しているのは、ドラフトキングスのほかにもう1社、ファンデュエル(FanDuel)の2社があり、DFS市場は2016年時点でこの2社が95%ほどを独占していました。
しかしその市場を構成するのはこの2社だけではありません。ほかにゲームに参加するユーザー向けに情報を提供する専門誌やネットのサイト、あるいはテレビも含まれます。
さらにファンタジースポーツ事業者はテレビ広告やスポーツ組織などへ巨額の資金提供もしており、巨大な市場を作り上げています。
しかしアメリカではこれだけの市場規模となっているにもかかわらず、日本ではあまり話題になっていません。それはなぜでしょうか?
日本でもファンタジースポーツを楽しめる?
米国企業であるドラフトキングスもファンデュエルのサービスは、日本では利用できません。というのも法律上、賞金が発生するゲームに日本から参加することはできないからです。
日本では「スポーツに賭ける」ことができるものといえば、「スポーツくじのtoto」くらいしかありません。とはいえスポーツ庁は2025年までにスポーツビジネス産業を15兆円規模にすることを提唱しています。
現状では日本でファンタジースポーツに参加することはできないのでしょうか。
実は日本にも、1995年に「ファンタジースポーツジャパン」がサービスを開始しています。
このサービスでは日本のプロ野球のほかに大リーグやアメリカバスケットボールのNBA、フットボールのNFLなどで好きな選手を選び、自分だけのチームを作ることができます。そしてユーザー同士がチームの成績を競い、順位の上位者にはパソコンやiPadなどの賞品が与えられます。ただし日本では賞金が出る大会を開催できないため、あまり人気がありません。
それでも世界でのファンタジースポーツ市場の拡大を受けて、日本でも新しいサービスも始まっています。
2020年には株式会社Neo Sportsが「イニングキング(INNING KING)」というサービスが開始しました。イニングキングは、サイト内で使用する独自の仮想コインを使ってユーザーがプロ野球での勝敗予想をするサービスで、まずはその楽しさを広めようという意図があるようです。
また、同企業が新たにサービス提供を開始した「Fantasy Stadium(ファンタジー・スタジアム)」もあります。「ファンタジー・スタジアム」はゲーム内でポイントを貯めることで、グッズの応募などができる予定になっています。
株式会社Neo Sportsは、スポーツ市場の活性化のために、ファンタシースポーツの普及を目指し、日本のプロ野球はもちろん、ゴルフやバスケットボールなどに対象を広げてファンタシースポーツを通し、日本のスポーツの魅力を世界に広めるとしています。
社長である島田佳和氏はいずれ、参加費を支払って賞金が得られるようにし、参加費はスポーツチームや選手に還元できるような仕組みを作りたいと語っています。
まとめ
日本ではまだ法律上解禁されていないファンタジースポーツですが、北米ではかなりの市場規模となっていることがわかります。
日本でも賞品を獲得できるサービスが提供されているので、自分のチームを作ったりゲーム結果の予想をすることを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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