2021年9月、スポーツトレード社(Sporttrade)という企業が米ナスダックから出資を受けました。スポーツトレード社は、スポーツベッティングを株式取引のように行えるサービスを提供するスタートアップ企業です。
米ナスダックはこの案件に関連して、いずれ証券取引会社がスポーツベッティング業界に参入すると述べています。そこでスポーツベッティングが今後、どのようなトレンドを生み出すのかを考察してみました。
スポーツトレード社のサービス内容とは?
スポーツトレード社が提供するのは、スポーツベッティングの「賭け」を売買するプラットフォームです。
スポーツベッティングは試合の勝敗を予想し、当たれば配当に応じた勝利金を得ることができます。予想が外れたら賭け金はすべて没収されます。
通常、スポーツベッティングの配当倍率は刻々と変動し、試合が始まってからも賭けを受け付ける場合には配当倍率が変わります。
スポーツトレード社では、その賭けの「権利」のようなものを売買できます。つまり、ほかの人が購入したベットを購入することで、予想が当たれば配当金が得られるということです。
たとえればこれは、株価指標の先物のようなものと考えてよいでしょう。予想が当たれば得られる配当金を手にする権利を売買するからです。
現在はこのサービスはまだ準備段階で、ニュージャージー州でライセンスを取得する予定となっています。利用できるのはアメリカでスポーツベッティングが解禁されている州にのみ限られているので、日本から利用することはできません。
スポーツトレード社が誕生したきっかけ
スポーツトレード社のアレックス・ケイン氏は2016年のマスターズ優勝者としてインドのゴルファーに賭けていました。このゴルファーは4日間のトーナメント前半で成績が良く、そのまま優勝すれば高い配当倍率での勝利金を得られるはずでした。
結果としてケイン氏が賭けていた選手は15位タイで終了し、ベット金額はすべて失うこととなりました。ケイン氏はその選手が好成績であるうちに、この賭けの権利を売却できたなら利益を得られたのにと、考えたそうです。
これがスポーツトレード社を立ち上げるきっかけになったとのことです。サービス提供が始まれば、このゴルフでの賭けのようにオッズが高い賭けの権利も、途中成績の良し悪しに応じて高い価格で売却できるようになります。
今後はスポーツベットの権利を売買するプラットフォームが増える?
スポーツトレード社のサービスはまだ一般的に広まってはいませんが、米ナスダックは今後このようなサービスがスポーツベッティング業界に参入すると考えています。
株式売買ができる「ロビンフッド」のような証券売買会社も、これから参入するのではないかと米ナスダックの担当者が語っています。
これはいわば、スポーツベットの証券化のようなものです。
スポーツベットの証券化がもたらすこと
今後スポーツベットの証券化が行われ、そのプラットフォームサービスが増えるとどうなるのでしょうか。
おそらく株式などの投資家がスポーツベット市場に参入すると考えられます。問題はその値付けですが、スポーツトレード社のようなプラットフォームサービスが増えることで透明性が高まると考えられます。
また値付けも先物のように、テクノロジーにより適切な価格が算出されるようになるでしょう。その結果、市場の歪みも少なくなり一部の参加者が有利となるような状況も少なくなると考えられます。
そしてユーザーにとっての利点は、購入したベットを試合が終わる前に「売却できる」ことにあります。通常のスポーツベットは、一旦購入すればあとは結果を待つのみとなり、当たれば配当金を得て外れたら購入金額を失います。
しかし、スポーツトレード社のようなプラットフォームでベットの売買をすれば、もし試合経験で不利と判断すれば途中で売却し損失を限定させることができます。あるいは試合の状況に応じて有利とみれば、途中で利益を確定することも可能です。
このように「当たるか外れるか」の2択で結果が決まるわけではなく、試合の途中で資金コントロールができるようになります。
まとめ
スポーツベットの「先物」のようなサービスは斬新なアイデアと言えるでしょう。そしてこのようなサービスが普及すれば、スポーツベットの業界はさらに市場を拡大させると考えられます。株式や先物のトレーダーも市場に参入すると予想されるからです。
また、スポーツベッティング業界も当たり外れにより配当金を得るかベット金額を失うかの2択ではなく、リアルタイムの試合進行により途中で換金できるという選択肢が生まれることになります。