
日本でもスポーツベッティング(賭博)の解禁が検討されていますが、これはスポーツ産業の成長と財源の確保が目的です。まだ具体的な動きはありませんが、経済産業省をはじめ楽天や電通などの企業も動きを見せています。
そこで今回は、日本のスポーツベッティング解禁に向けてどのような動きがあるのか、具体的なその現状を解説します。
日本でのスポーツベッティング解禁に向けた現状の動向
日本では現状、スポーツビジネスの活性化と財源確保の面からスポーツベッティングに注目が集まっています。
5月17日にはスポーツビジネス小委員会(自民党スポーツ立国調査会)が政府にスポーツベッティングを検討するように求めました。これはスポーツ産業を成長させてスポーツ振興の財源を確保することが狙いです。
6月に経済産業省の「地域×スポーツクラブ産業研究会」がまとめた「第1次提言」では、スポーツベッティングに関して触れています。そこではスポーツ資金循環の創出において、米国でも解禁されたスポーツベッティングが日本に存在しないこともトップスポーツの成長に影響していると指摘しています。
欧州などはトップスポーツの収益が、地域スポーツクラブの安定的な成長に関係しているとみられています。対して日本のトップスポーツの市場規模は、欧米に比べると圧倒的に小さいままです。
そこでDX(デジタル技術によるビジネスなどの変革)などを活用し不正やデメリットへの対策を講じて、スポーツベッティング市場を活用することが資金循環に寄与するのではないかと述べています。
経済産業省と電通の動き
スポーツの資金循環における財源確保の必要性を説く経済産業省と電通が、スポーツベッティングの枠組み作りを準備しているとの話があります。その真偽は定かではありませんが、電通は「SPORTS TECH TOKYO」というプロジェクトを運営しています。これはスポーツにイノベーションを起こすことを目的に、2018年から始まったものです。
このプロジェクトにより新しいスポーツ産業の誕生が期待されることと、スポーツの成長産業化を掲げる政府との思惑は合致すると考えられます。
電通が主催するSPORTS TECH TOKYOとスポーツ庁は共同で「INNOVATION LEAGUE(イノベーションリーグ)」というプログラムを開催しています。
INNOVATION LEAGUEのデータビジネス・パートナーとしてジャングルX株式会社の直江文忠氏が参画していますが、ジャングルX株式会社はモバイルスポーツベッティングプラットフォームを開発・運営しているおり、サッカーの本田圭佑選手が投資している企業でもあります。
楽天のスポーツベッティングに関する取り組み
2020年12月2日にバスケットボールをtoto(スポーツ振興くじ)に加える改正スポーツ振興投票法が成立し、2022年には導入されることになりました。その翌日に、楽天の三木谷氏をトップとする「新経済連盟」が政府の観光政策に対しての提言を発表しました。
提言そのものはポスト・コロナ時代を見据えた新しい観光モデルを確立するというものですが、実はその中にスポーツベッティングの全面解禁に関する文言が含まれていたのです。
その内容は、スポーツベッティングの導入でスポーツ振興を見直すこと、そしてインバウンド回復のためeスポーツを振興することが必要といったものになっています。そのeスポーツもtotoやスポーツベッティングの対象とする案も添えられていました。
楽天は現在、地方競馬を対象に馬券を購入できる『楽天競馬』を運営しています。
サイバーエージェントのスポーツベッティングに関する取り組み
ウインチケット(WINTICKET)を運営する株式会社ウインチケットを子会社に持つサイバーエージェントは、2018年にスポーツの勝敗結果やニュースなどの予想結果で賞金を山分けできるベッティングサービス『SUPERCHOICE』を運営していました。このサービスは2019年4月に運用休止となりましたが、サイバーエージェントのスポーツベッティングへの関心度は高いと考えられます。
そのサイバーエージェントは2020年10月7日、日本のスポーツベッティング市場は7兆円規模になると発表しました。これまでさまざまな形でスポーツを支援してきたサイバーエージェントはスポーツ産業におけるあらたな収入源として、スポーツベッティングが解禁されれば年間で最大7兆円の市場規模になるとしています。
まとめ
現状ではまだ具体的に、日本でのスポーツベッティング解禁の動きはありません。しかし経済産業省でもポスト・コロナにおけるスポーツ産業の成長のためには、スポーツベッティングが必要であるとの認識がなされています。それに歩調を合わせるように楽天や電通といった民間企業も、スポーツベッティングの必要性を説いています。